コンクリートは強度と価格の面からまた施工の容易さから現在最も優れた建築資材です。マンションの場合は、圧縮強度(押さえつけられる力)に加え、コンクリートの中に鉄筋を入れた鉄筋コンクリートや鉄筋コンクリートに鉄骨を埋め込んだ鉄骨鉄筋コンクリートとして、用いられています。耐久性についても、配合や工法によって500年以上を確保することができるとされています。非常にすぐれた材料ではあるのですが、居住用空間として使う場合には非常にくせの強い材料でもあります。それは熱伝導率が大きいという特性、すなわちマンションが巨大な蓄熱(冷)体なるということです。
材料
熱伝導率
(数字が大きいほどよく熱を伝える)
コンクリート
1.6
アルミ
200
杉・ヒノキ
0.12
グラスウール
0.038
図-1
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マンションの壁や屋上の表面温度は、日射をうけると上昇をはじめ、熱伝導率の大きいコンクリート内部にどんどん伝わっていきますが、マンション自体は巨大なので、表面温度はゆっくりと上昇していきます。夜になって外気温が下がっても一旦上昇したコンクリートの温度はすぐにはさがらず、大きなエネルギーをかかえたまま再び熱を蓄えはじめます。マンションの躯体温度がピークまで上昇したとき外壁はFig.1のような温度分布をしめすことになります。
図-1
*内断熱の場合
Fig.1壁の温度分布
またそのときの蓄熱量は次のように計算することができます。(温度差30度、比熱0.2、比重2.4としました)、上段が夏、下段が冬です。
マンション最上階で太陽にあたる部分が100uでもあれば、
約4トンの熱湯と同じエネルギー持つ部屋を家庭用の小さなエアコンで冷やしている
ということになります。だからエアコンをきるとすぐに熱帯夜になってしまうわけです。
逆に、冬の1858Kcalという蓄冷量は、壁1m
3
でみると、
室温の水18.1リットルを凍らせるエネルギー
に相当します。
壁厚(m)/体積(m
3
)
コンクリート
平均温度
室温
温度差
蓄熱(冷)
量(KCAL)
夏
0.18
58
28
30
2592
冬
0.18
1.5
23
21.5
1858
※2592Kcalの熱量というのは、室温の水約36リットルを沸騰させるエネルギーに相当します。
さらに体感温度というのがあって、それは気温、湿度、風速など様々な影響をうけます。輻射温度は、気温と同じくらいの影響を与えるといわれています。仮に、夏場に深夜の深夜にコンクリートの温度が35度くらいまで下がるとして、室温が28度だとしても体感上は31.5度くらいになってしまいます。逆に冬場は、体から出る輻射熱が冷たいコンクリートにどんどん奪われてゆくので、いっそうゾクゾクした感じがします。
エアコンなど温風暖房(冷房)を使うと部屋の中央に比べて、床面の温度が2〜3℃低く、天井付近の温度が2〜3℃高くなり、上下で5℃を超える温度差になるといわれています。わたしたちの事務所(SRC造9Fの9F)ですと、もっとひどくて冬場だと天井付近で31度中央で24度足元では18度くらいです。週明けの月曜日などでは足元が16度くらいのこともあってどうも16度を下回るとスースーと寒い感じがします。
Q値(熱損失)の大きい建物全体を空調するには大きなエネルギーを必要とします。ほとんど場合、場所と時間を限って使用する部屋だけを空調する局所間歇空調をしなければ空調に使う費用が膨大な額になります。暖房室と非暖房室の間には10℃を超える温度差ができるとされており、私どもの事務所でも冬場では16℃の温度差があります。そして、空調室でも就寝前に空調を切ると翌朝には10〜15℃も室温が下がることになります。
室内に上下温度差ができる最大の理由は暖かい空気は比重が軽く、冷たい空気は比重が重いことです。 空調を強く掛けるほど大量の暖かい空気が天井付近に集まり、冷たい空気は床付近に集まります。したがってQ値を小さくしたでは空調エネルギーしか使わないので上下温度差ができにくいと言えます。
温度差が大きいということは、次のような問題を持っています。
1)空調費が増加すること。
2)結露、カビが発生しやすくなること
空調室と非空調湿の温度差が大きい家では更に大きい問題が起こります。空調室の湿度と空調室と非空調室の低温部分の温度差が次の表の条件を満たすと結露を生じます。表の温度にならなくても、湿度が80%を上回ればカビが生育する条件を満たします。押入などヒトが住まない家の部分でも低温になり湿度が高くなればカビにとって絶好の繁殖場所になります。
3)ヒートショックがおこりやすくなること。
浴室・脱衣室・トイレなど普段暖房しない部屋の温度が低いと脳血管障害や心筋梗塞などヒートショックを起こす原因になります。
ヒートショックとは、急激な温度の変化が、身体に及ぼす影響のことです。例えば、冬の入浴時の脱衣室から浴室への急激な温度変化は、血管を著しく伸縮させるとともに、血圧や脈拍を大きく変動させます。これにより、脳梗塞や、脳出血を引き起こし深刻な事故に繋がることがあります。 最近、浴室での事故死の内、「かなりの部分が、ヒートショックによるものではないか」といわれておりご高齢の方が家庭内で亡くなる原因の4分の1を占めているのが、この「ヒートショック」です。
結露とは、物質の表面、または内部で、空気中の水蒸気が凝縮することをいいます。温度20℃・湿度50%の室内における露点温度は、9.6℃ですから、壁や窓などの表面が、9.6℃以下の場所で結露が発生することになります。
一般に結露といえば、表面結露を指します。 冬季、窓ガラスやアルミサッシで発生する場合は、水滴は排水孔を通って排出され、室内の湿度が減少します。その結果加湿器を作動させることになり、ますます結露を起こさせる悪循環が生じることになります。この場合開口部に断熱性能の高い、複層ガラススや断熱サッシなどを用いると開口部付近での表面結露は起こりにくくなります。
一方、室内や屋外の水蒸気が壁体内に侵入する場合に発生します。 これにより、木材や断熱材等の腐敗や劣化が進むことになります。主に冬に起こる現象ですが、エアコンの普及により夏季にも起こるようになりました。
冬型結露は暖房された室内の水蒸気の量が多いと冷たいガラス、サッシ、壁の中の温度勾配で露点以下の部分で生じます。一方、夏型結露は、夏季の地下室や常時開放された倉庫などの床、エアコンがよく効いた部屋の冷たいものに、高温多湿な外の空気が流れ込んで接触することで発生します。 また冬型結露の逆で、エアコンでよく冷やされた建物では、外部の湿った空気が壁の内部に進入し温度勾配の露点温度以下の部分で発生します。
基本的な結露防止手段として、室内の水蒸気量を減らすか、表面温度を上げる方法があります。
(1)断熱(断熱補強)
表面温度を上げるために、断熱を行なうことはもっとも基本的な手法である。さらに、結露の発生しやすい熱橋部(ヒートブリッジ)では、断熱補強を行ないます。
(2)換気
冬季の場合は、絶対的に外気の湿度が低いため、計画換気を行うことで、室内の水蒸気量を減らすことがもっとも有効となります。
(3)暖房する、冷房の設定温度を上げる。
冬季は、室内を暖房することで、建物内部の表面温度が上昇し、結露防止になります。しかし、石油ファンヒーターのように暖房時に水蒸気を大量に発生する暖房方式は、結露の助長にしかなりません。また、防湿層が適切に施されていない場合は、室内の水蒸気量が増えるため、内部結露の危険性が増すので注意が必要です。夏季は、同様に冷房の設定温度を上げることで、建物内部の表面温度が上昇し、結露しにくくなります。ただし、これにより、空気中の水蒸気量がかわるわけではありません。
(4) 除湿
室内の水蒸気量を減らすために、除湿器や除湿材を用いる手法があるが、除湿剤の場合は大量に必要となります。
内部結露は、一過性のものであれば結露しても乾くため、多少であればそれほど神経質になることはないと思います。とくにひどい場合は、防湿層を施工します。建物の計画段階で、室内側に防湿層を設けます。壁の中の温度勾配で、露点に到達すると結露が起こるので、その元になる水蒸気が室内から壁内に侵入しないよう、防湿膜を設けます。また夏季の内部結露を防止するには外部にも防湿膜を張る必要がある。すなわち壁は水蒸気がどちらの面からも全く透過できないようにしてしまうわけです。このように完全に防湿層が施工されていると、結露を防ぐとともに、屋内の湿度の低下も防ぐので、加湿の必要も無くなります。
ネクスト・インフィルでは、「音」「エネルギー」「換気」「結露」「コスト」を総合的に判断して仕様設計します。
基本的な考え方はコンクリート蓄熱(冷)体から、一旦室内を独立させるために、断熱遮熱をしっかりとってQ値(熱損失係数:小さい方がよい)を高め、結露対策として計画換気を行います。
コンクリートの内側に、躯体とは独立した内箱を作ります。
最もローコストである断熱材であるグラスウールを用いてコンクリートと箱の間の空間を使用して6面断熱を行います。グラスウールの量は戸建住宅で次世代省エネ基準とされている量(50o/10s/m
3
)を用いています。グラスウールは高い吸音効果をもっているので、これにより、同時に界壁の音漏れ対策をおこなったことになります。。
室内の気密をとるために、インナーサッシを用いで2重サッシとします。マンションの場合、玄関ドアは交換できないので、換気計画上は通気口として考えます。
一般的マンションでは、角部屋ですと、Q値は5.1程度のものが多いですが、ここまでで2.3程度にまで改善されています。Q値2.3というのは、ときどき床暖房をしてやるとほとんど暖房が必要ない程度です。
さらに、結露対策として、キッチンの換気扇を利用した24時間換気システム(0.5/h)を導入します。
内箱方式をとっているので外断熱の考え方を援用することができます。コンクリート躯体と内壁の間に、両側に空間を取って、両面にアルミ箔を融着したポリエチレンテレフタレート発泡樹脂シートを施工します。アルミ箔が輻射熱を反射すると同時に、透水抵抗値がコンクリートより高い遮熱シートが防湿層として働き、水分の透過を許さないので、内部結露の心配もなくなります。人が体感する熱の大部分(75%ともいわれています)が輻射熱ですから、これにより十分な断熱効果をえることができます。
本来の外断熱工法では、室内の高低差による温度差は、コンクリートを通じて再配分されるのでより熱効率は高くなりますが、この場合はそのメカニズムはないので、計画的な空気の循環と換気があるとより快適な空間となります。
透湿抵抗値
コンクリート
376.26
石膏ボード
64.50
セメントモルタル
301.01
アルミ
107550400000000
グラスウール
15.05
合板
892.28
空気
10.75
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@ 室外からの熱は室外へもどし、室内からの熱は室内側は反射します。このため、非常に熱効率のよい空間となります。
A 断熱シートが防湿層としても働き、AとBの空間が同じ湿度に、CとDの空間が同じ湿度になるので壁内結露はおこりません。
(1)の仕様と(2)の仕様を各住戸の6面ごとに、コストを考えた最適な設計を行います。
LLとかLHとか言う言葉をお聞きになったことはあると思います。LLが軽量衝撃音(コツコツとかトントンとかいう音レベル)、LHが重量衝撃音(ドーンとうい大きな音)レベルの低減量をあらわすものとして知られています。これが、すごく有名になった背景は、今はなき住宅金融公庫が融資基準のひとつとして使用したというのがことの起こりだろうと思います。
このころは、JISが実験室における測定方法を定め(A1440-1(軽量衝撃源)A1440-2重量衝撃源)、衝撃音レベルの低減量(デシベル)の測定結果に等級を設けていたので、それを援用するかたち規定したのではないかと思います。(財)ベターリビングが住宅部品のBL認定をするかたわら測定業務を請け負っていたこともあって、そこで試験依頼された床材がいつの間にかBL認定という誤解を生んでいったと思われます。BL認定の部材に床材という括りすらありません。この公庫基準がマンションの規約となって残骸となって残っているというところでしょう。
住宅性能表示制度でも、床衝撃についても等級付けされています。こちらもJISが基準になっていますが「対策等級」という言葉になっています。おまけに「はじめに」という章で次のように記載されています。「音の遮音性能については現時点の科学的な知見の範囲では・・・正確に把握することは困難・・・実用的な面では施工上の種々の誤差・・・一定の仮定をおくなどしてあくまでも設計図書の段階で判断・・・」となっています。
床遮音をグーグルで検索していくと、個人の方のサイトで「LL-40を保証してもらった床材」というのが紹介されていて、たどってゆくとある会社のサイトにたどりつきました。そこでは「マンション居住者に朗報・・・LL40が実験で証明されました・・・ただし保証しません」となっていました。
自社測定の結果LL-45の性能をもっているとされている置き床の施工現場をいくつかのぞいて見ると、ほとんどの現場で大工さんがいきなり、壁面に胴縁を打ち付けそれに固定し始めました。大工さんにしてみれば、床面が「フワフワでやわらかすぎて、これでは床としてダメだ」ということで、固めはじめたのだと思います。きっと良心的な大工さんだろうと思います。がこれでは遮音性能はガタガタです。
実は、市場での混乱を意識したのか、平成19年10月3日に大元のJISの試験方法そのものが変更されてしまいました。建材試験センターで測定しても減衰率でしか評価してくれなくなりました。
LLの性能をを上げるというのは単純で、だれにでも分かると思いますが、とにかくやわらかい物を使うことと伝わりにくくするために、面を小割にすることです。これで実験上の数値は改善することができます。結果としてできあがる床は、妙に浮き沈みしてフワフワと気分が悪くなったりします。直貼り床と二重床を較べると同じ性能ならば直床のほうがはるかにコストをかけずにつくることができます。フワフワの樹脂発泡体を敷いて、フローリングを貼れば出来上がりですから。ただし、発泡体の発泡効果はそれほど続くものではないので、すぐに性能は失います。ただ安くできるので、公庫時代は多くの直床マンションができました。その結果、断熱スペースも配管スペースもない、底冷えのするフワフワの床ができてしまいした。
LHというのは、基本的にはスラブ厚で決まります。LHをあとから改善させる方法は、スラブを打ち増しするか、アスファルトや鉛など、とにかく重いものを敷いていくしか方法がありません。設計上のLHを確認することはいいことです。スラブ厚がわかります。スラブは構造上は建物のゆがみ強度をきめています。ということで、LLはほとんどあてにはなりませんが、JISの定める測定試験に従い、外部機関(建材試験センターなど)で測定した結果のグラフは提示してもらってください。本来は実測すべきであるとおもいますが・・・。
ちなみに私たちは「フワフワ」でもなく「ガチガチ」でもなく「ピタッと」をコンセプトにまったく新しい床システムを開発しました。二重床で、大工さんにも納得してもらえる面の剛性を保ちつつ、LL45からLL35までに対応した仕様を用意しています。ただし、あくまでも実験値ですけど。ということで、私たちはできるだけBefore―afterで階下の方にも立ちあっていただいて性能測定をしていただいています。費用はかかってしまいますが、改善の度合いは顕著ですから、ご本人にも、階下のお宅にも、お隣にも(壁の遮音測定もおこなっています)、好評をいただいています。
下のグラフは世田谷区のあるマンションのBefore-Afterです。築38年でスラブの厚みが薄く、直貼りフロアでした。
Before
After
LH60
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LH55
【画像クリック拡大(PDF)】
Before
After
LL60
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LL45
【画像クリック拡大(PDF)】
LL、LHの目安はだいたい次のようになっていますが、LH-60、LL-60というのはなかなかきびしい状態です。これに対し、私たちでは実験値ではLL-35を得ている仕様を摘要し、施工した結果、LLでは3ランク、LHでは1ランク改善させることができました。とくにLHは基本的にスラブの厚みに支配されるので、なかなか改善がむつかしい、とされています。また一般的には二重床にすると1ランク落ちるとされていますから、私たちの場合は実質2ランク改善していることになります。この結果については、測定をお願いした測定会社の方々も驚いておられました。
床遮音というのは、こういう話しですから、実験値を鵜呑みにする事なく、実効性のある遮音をきちんと作ることが大切だと思います。
床というとすぐに「遮音」という話しになってしまいますが、床への嗜好性が絨毯からフローリングに移行した際に、顕在化したもので、もっともっと床性能を本来的に言えば、「立ち仕事をしていてつかれにくい」とか「お年寄りがころんでも骨折しにくい」とかいう人間工学(エルゴノニミクス)的な話しがこれから大切なのではないでしょうか。私たちの実験でも、よく配慮された床は膝にかかる加速度(衝撃)を約30%軽減するという結果をえています。体重が30%減った状態の膝への負荷ですむということになります。また、床下と天井裏に「炭」を入れたお客様がおられます。除湿を目的とした仕様ですが、それだけではない、実にすがすがしい空間になりました。こういった健康面への性能も重要なことではないでしょうか。
音等級
床衝撃音としての生活実感
走りまわり、足音など
椅子、物の落下音など
その他の例
LL−40
遠くから聞こえる感じ
殆ど聞こえない
気がねなく生活ができる
LL−45
聞こえるが気にならない
サンダル音は聞こえる
少し気をつける
LL−50
ほとんど気にならない
ナイフなどは聞こえる
やや注意して生活する
LL−55
少し気になる
スリッパでも聞こえる
注意すれば問題ない
LL−60
やや気になる
はしを落とすと聞こえる
お互いに我慢できる限度
LH−30
通常では聞こえない
LH−35
ほとんど聞こえない
LH−40
遠くから聞こえる
LH−45
聞こえても意識しない
LH−50
小さく聞こえる
LH−55
聞こえる
LH−60
よく聞こえる
LH−65
発生音がかなり気になる
LH−70
うるさい
LH−75
かなりうるさい
LH−80
うるさくて我慢できない
■軽量床衝撃音(LL-*)とは
・スプーンを落としたり、イスを引いたり、スリッパで歩いたりしたときなどに発生する音のモデル
■重量床衝撃音(LH-*)とは
・重いものを床に落としたり、子供が飛び跳ねたりしたときなどに発生する音のモデル
床(天井)の作り方には直床(天井)と二重床(天井)というそれぞれふたつの方法があります。直床というのはコンクリートの躯体に直接フローリング等の仕上げ材を貼る方法、二重床というのはコンクリートの上に下地を組み、懐をもうけて面をつくりフローリング等の仕上げ材を施工するという方法。仕上げ材は、初期はほとんどがカーペット仕上げでしたので、遮音問題というのは顕在化していませんでした。
直天井方式は直接ペンキを塗ったりクロスを貼ったりして仕上げます。基本的にはこの2つの組み合わせでつくられてきました。
●昭和40年代(65年)は、
【直天―二重床】
●昭和50年代(75年)は、
民間では 【二重天井―直床】(配管部の床のみ二重)
公団では 【直天―直床】
●昭和60年代(85年)は、
【直天―直床】(配管部はスラブそのものを下げる)
●それ以降のものは、
【二重天井―二重床】(関西では直床―直天)
(これは傾向であって、いずれの年代でも混在はしている。お住まいのマンションがそうであるということではありません。)
@直床―直天は階高をおさえ、階数をふやすことができ、経済性が高い。
A高層マンションが増えてくる90年代初めころまでは、直天、二重天にかかわらず電気配線はすべて天井に埋め込まれている。にもかかわらず二重天井になっているのは、コンクリート仕上げよりもスピードの速い天井仕上げの工法(軽天)ができたことによると思われる。
Bその頃から、高層化するために軽量で大きなスラブ面が必要となったためにボイド工法が採用され、また高層マンションの上部で乾式の界壁が使用され始めた。その分、音の問題が発生している。
C75年ころの直床の場合は配管スペースがとれないので、PSの側に水廻りがくるようにプランを限定し露出配管するか、配管がスラブに埋め込まれている。近年の直床はスラブそのもの下げて配管スペースを確保しているので、プラン限定は緩やかではあるが、床の継ぎ目で材質がかわるので、歩行感が悪化したり、床鳴りの発生原因ともなっている。
年代別にマンションの建築数とストック数を追いかけてみると、以下のようなグラフになります。40年代では、44万戸、50年代で96万戸、60年代(1985年からの10年)で、181万戸、それ以降で357万戸くらいあるでしょうか。1981年に仙台沖地震の影響をうけて新耐震基準が設定されましたが、その基準以降のもので540万戸それ以前のものが118万戸あるということになります。
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そもそもは、平成18年6月8日に公布・施行された「住生活基本法」がベースにあります。
住生活基本法は
(1)フロー(新築)からストックへ
(2)量から質へ
(3)住宅から住生活へ
(4)国から地方へ
という4つの骨子から構成されています。さらに国と地方が住宅と暮らしの質について目標(耐震化率、バリアフリー化率、省エネ化率、住宅性能表示実施率などの数値目標)を設定しその達成の為に計画立案することとしています。
この意義は、昭和41年度よりはじまり8次まで実施され平成17年度で終了した「住宅建設五ヵ年計画(5年ごとの公営公庫公団の建設目標個数を位置づけてきた)」に対し、社会経済情勢の著しい変化すなわち住宅ストック量の充足、本格的な少子高齢化を受けて新たな住宅政策へと転換したことにあります。すなわち、日本におけるストック型社会への舵取りを明確に示したものでもあるわけです。
ストック型社会というのは概ね、
@社会インフラ・生活インフラを多世代にわたり利用できるように長寿命化すること
Aそれにより地球環境を持続可能型にすること
B資産の世代間蓄積を進め生活を豊かにする事
C結果として経済・環境の健全化と持続をはかる。
ということで定義されているものです。
この住生活基本法を受けて、2007年5月に「自民党200年住宅ビジョン」が提示されました。これは自民党の住宅土地調査会(福田現首相が当時会長)が検討し「200年住宅の建設」「維持管理」「流通」「金融」「社会基盤・街並み」の分野で、「構造躯体と内装・設備(インフィル)の分離、耐震性・耐久性・可変性、維持管理の容易さなどを確保するための超長期住宅ガイドラインの策定」、「家歴書の整備」、「リフォーム支援体制の整備」、「税負担の軽減」など12項目に上る政策を提言。その実現に向け、2008年の次期通常国会に関連法案を提出することも視野に入れています。
その他には、分譲マンションを長期にわたり適切に維持管理するため、区分所有者以外の第三者(マンション管理業者、マンション管理士)が管理者となる「管理者管理方式」などの導入を提言した。
リフォーム支援体制の整備に向けては、第三者が長期修繕計画を作成支援する仕組みや、大規模修繕などを円滑に行う仕組みとともに、既存住宅の購入に際してリフォームを行う場合の融資額引き上げが必要とした。
200年住宅の資産価値を活用した住宅ローンなどの枠組み整備にも言及し、担保となる住宅以外に支払いの責任が遡及(そきゅう)しない「ノンリコースローン」、住宅を担保として生活資金などの融資を受ける「リバース・モーゲージ」などの活用を求めた。
税制面での対応としては、宅地建物取引業者が既存住宅を買い取り、リフォームして販売する場合の消費税を軽減するよう要望。さらに200年住宅にかかわる消費税、固定資産税の取り扱いについても検討すべきとした。
また、住宅性能表示制度に、間取り変更に関する項目の追加を検討すること、中古市場整備では、不動産取引価格の情報開示や将来に残すべき中古住宅のモデルの提示のほか、瑕疵担保責任の確保なども盛り込まれています。(瑕疵担保責任:主に売買の目的物に、通常の注意では発見できない欠陥(=瑕疵)があった場合に、売り主などが負うべき賠償責任のこと)。
さらに、この200年住宅ビジョンをベースにして「長期優良住宅普及促進法案」が年内可決を目指しておりまた「超長期住宅先導的モデル事業」の提案公募が4月に開始されています。
200年という期間の長さが変な議論を呼び起こしてしまっているような感がありますが、内容としてはすでに議論されてきている事柄が集大成された形で、新味はないものの概ね正しい方向を向いて、尚且つ、少しはやる気になったのかなという感じが伝わってきます。
これからリフォームをとお考えの場合は、構造躯体の耐震性はともかく、内装・設備(インフィル)の分離、耐久性・可変性、維持管理の容易さなどを確保するとか、「家歴書の整備」などは、売るかもしれない時のことを考えて、やはり気にかけておくべきことでしょう。
住生活基本法が平成18年ですから、それに先立つ事7年、平成11年に「住宅の品質確保等に関する法律」という法律が制定されています。「品確法」とも呼ばれていますが、そもそもは秋田県の木造住宅株式会社という第3セクターの会社が起こした欠陥住宅事件を直接的な契機として定められた法律です。従って、消費者保護のスタンスが強いものですが、その中で「性能表示制度」をつくることが決められていることを受けて、平成12年に新築が、2年後に既存住宅についての制定されています。これにもとづき評価を受けるとそれぞれの項目について等級表示され、ローン優遇や地震保険の割引などの特典があるわけですが、そのことよりもなによりもこの法律の意義は住宅の性能と品質の要件を明示したというところにあると思います。それによると、
「構造の安定」「火災事の安全」「劣化の軽減(雨漏り)」「維持管理・更新への配慮」「温熱環境」「空気環境」「光・視環境」「音環境」「高齢者への配慮」「防犯対策」
の10項目になっています。
200年住宅ビジョンの中身とよく似ているでしょう。200年ビジョンのご説明のところで「新味はないが本気」と申し上げた所以です。1998年(平成10年)時点で住宅ストックは量的にはすでに充足していたということももうしあげましたが、日本の住宅がこの頃から「量より質」を意識しはじめているということになろうかと思います。
マンションの場合、制度がマンション全体を評価の単位としており、専用部はオプション扱いになってしまっているのと、構造問題がクローズアップされすぎて、そのあとの話しがうやむやのような思いがします。200年ビジョンでは、スケルトン(構造部)とインフィル(内装部)を分離する考え方が示されているので、スケルトンはマンションで共通としても、インフィルのありようで等級もかわるというのが本来の姿ということになろうかと思います。なぜならば、本来、マンションは専有部単位で取引されているからです。
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